Wednesday, November 21, 2012

One Direction 第2回 ピアノ教師 浦田彩・画家 西村佳子



One Direction 〜自分を信じて進む者たち〜


ー第2回ー 西村佳子さん、浦田彩さん

(右奥が西村佳子さん、右前が浦田彩さん。
左前が著者で、左奥は私と同じNPO法人かものはしプロジェクトでインターン中の甲斐雄一郎くん)

【経歴】
西村佳子(にしむらけいこ):1978年5月16日生まれ。京都府出身。愛知県立芸術大学油画科研修生2004年修了。日本で約5年間絵を書いた後、2012年3月に初めてカンボジアに来る。その後一度帰国し、6月に再度カンボジアへ来て、現在まで絵画の個展などを開催している。モットーは、「気負いせずにいつでも楽しんで絵を描く」

浦田彩(うらたあや):1982年1月23日生まれ。大阪府出身。4歳からピアノを始め、2002年にヤマハ音楽院を卒業。22歳の時に、コロムビアミュージックエンターテイメント(現・日本コロムビア)よりメジャーデビューをするも、すぐに解散。23歳でカナダに留学した時、再度音楽の楽しさを実感し、あるきっかけで訪問したカンボジアでピアノ講師を始める。仕事と両立して、音楽集団miloを結成し、カンボジアにおける音楽教育の普及と確立を目指して活動中。モットーは、「バイクとカンボジア人の男には乗るな」
milo facebook Page: https://www.facebook.com/milo.angkor


■カンボジアへのそれぞれの思い

齊藤:こんばんは!今回は、One Direction第2回目ということで宜しくお願いします!

西:宜しくお願いします! 

齊藤:それでは早速ですが、お二人がカンボジアに来た理由をお聞かせいただけますか?

西村:私は、旅行で初めてカンボジアに来たんですね。まぁ、もともとは友人とタイに旅行に来ていたんですけど、そのまま帰るのではなくてもう少し旅行したいな〜っていうのと、アンコールワット見たいな〜っていう軽い気持ちでカンボジアに来ましたね(笑)。

浦田:私の場合は、学校を卒業した後、22歳の時に当時のコロムビアミュージックエンターテイメント(現・日本コロムビア)からメジャーデビューしたんですね。女の子と二人組だったんですけど。それで1枚目のCDを出した時に、なんか燃え尽きてしまったんです。メジャーが目的で、それ以上がなかったので、次の目標を失ってしまったんですよね・・・。

そしたらピアノもやりたくなくなってしまって・・・それで23歳の自分の誕生日にカナダに行ったんです。それは、もうピアノを辞めるためでしたね。普通のOLとして働くために、頭を整理しようと思って。

齊藤:カナダでは何をされていたんですか?

浦田:語学学校に通ってました。あとは、普通にバイトとか。

齊藤:本当にピアノを辞めるつもりだったんですね?

浦田:そうですね。1月にカナダに来て、6月にカナダで大きなジャズフェスティバルがあるんです。そこに私の大好きな演奏者がいるのですが、来た時にこう考えたんです。もし、6ヶ月間、ピアノを一度でもやりたいと思ったら、見に行こうって・・・。

齊藤:つまり、今ピアノを続けているということは・・・

浦田:そう(笑)!やっぱり好きだったんですよ。それで、その時くらいだったかな。どっかのHPに、「アフリカとカンボジアの子どもに歌を届けよう」っていう企画があったんですね。それで、親にどっちなら了承してもらえるかって考えて、カンボジアに来ようと思ったんです(笑)。

齊藤:え?でも、歌を届けるってだけで来る必要性って無いですよね?

浦田:いやぁ、歌を書くならやっぱり現状を知らないとダメだなって思ったんですよ。だから、来たんです。

齊藤:なるほど〜!プロですね(笑)。





■子どもの時からの夢だったんだ

齊藤:なぜ今の仕事を始めたんですか?

西村:幼稚園くらいの時でしょうか。近所に絵かきのおじいさんがいたんですよね。もう85歳くらいの人で。その人が子どもに対して絵を教えていたんですよ。無料ってこともあったし、通っていたんですね。そこでずっと遊ぶように絵を書いていたら、気づいたら高校も、大学も美術の学校に行っていましたね。なので、なぜ今の仕事?と改めて問われると困ってしまうんですよね(笑)。なんていうか、自然な流れだったので。

浦田:カンボジアに行こうと決めて、一回カナダから帰ってから行ったんです。それが23歳の時かな。その時、ゲストハウスに宿泊していたんですけど、そこにカンボジアの子どもたちがいっぱいいたんですよ。当時は、常にピアニカを持ち歩いていたので、子ども達の前で簡単にですが演奏したんです。そしたら、大多数が無反応で(笑)。「失礼なやっちゃな〜」って思ったりもしましたよ(笑)。

演奏が終わって少ししたら、子どものおかあさんが来てこう言ったんです。
「そんなことを教えるくらいなら、日本語を教えてください。音楽なんて習っても何にもならないじゃないですか」って。

それが衝撃的でしたね。自分の中で。それで、「私ここに来なきゃいけない!」って思ったんですよ。


ピアノ講師っていう夢は、小さいころから全く変わっていないんですよ。10歳の時も、20歳の時も、今でも。佳子さんも言っているように、「これだ!」って思った時の感覚って忘れないんです。例えば、初めてピアノ教室に行った時の記憶とか今でも鮮明に覚えてるんですよね。そんな感覚を子どもたちに持ってもらいたいなって思って、今の仕事をしてます。


齊藤:仕事で楽しい事ってなんでしょうか?

浦田:日本にいると会えない人に、カンボジアでは会えるんですよ。例えば、世界の芸術家、世界の音楽家にこっちでは会えるんです。それは、カンボジアで仕事をしている楽しみですね。お互い国境を超えて深い話をしあえるというのは、日本ではなかなか機会が無いですからね。

西村:混沌みたいな土地だから出来るかもしれないですよね(笑)。

浦田:そんな感じ!(笑)。タイのバンコクまで行くと規模大きすぎるし、秩序が整っていて、ムリかなと思うんですよね。となるとやっぱり、カンボジアというまだ小さなコミュニティだからこそ可能なのかもしれませんね。

齊藤:音楽や芸術、スポーツは国境を超えると、世間では言われていますが、それを実感した時の経験を教えていただけますか?

浦田:私、毎月田舎の小学校に行って楽譜を見せるプロジェクトをしているんですね。田舎にいる子どもたちは、ドレミの存在すら知らないし、英語もほぼ話せない。私はあまりカンボジアを話せないけれども、カンボジアの歌は歌える。つまり、ドレミを覚えれば、たとえ言語が話せなかったとしても、世界中の歌が歌えるよって子どもたちに言うんです。

すると、「わぁ!」ってなるんですよね。それが面白いなって思います。

齊藤:こっちって音楽のクラスってないんですね。

浦田:ないんですよ・・・。午前と午後で別れて授業をしているので、時間がないんでしょうね。国語、算数、理科、社会を教えていると、音楽とか体育とか教えていられないんだと思います。

齊藤:ピアノ教室の現在の生徒数はどれくらいいるのですか?

浦田:約150名ですね。

齊藤:それって多いですよね!?

浦田:あっ、でもグループレッスンとかもあるので、そんなに多い気はしないかなと・・・。個人だけなら30人くらいですね。

齊藤:カンボジア人は生徒さんの中にいるんですか?

浦田:いることはいるのですが、個人レッスンの30名の内、2名だけですね。個人的にはカンボジア人に音楽を教えていきたいし、広めていきたいと思っているので、その部分を仕事以外の活動である、miloで行っているという感じです。

齊藤2人ですか・・・。やっぱり、富裕層の子どもなんですか?

浦田:そうですね。

齊藤:なぜピアノ何だと思いますか?

浦田:う〜ん。選択肢が他に無いからなんじゃないですかね。シェムリアップにあるのって、水泳とピアノとかくらいですからね。日本みたいに、バレエとかテニスとか・・・そこまで多様な選択肢がないので、ピアノを習っているんじゃないかと思います。





(今回は、marumというオシャレなレストランでのインタビューです。
子どもを守るNGOにて運営されているそうです。シェムリアップに来た際には、是非!)



■考えられる人になってほしくて・・・

齊藤:音楽集団miloについてお伺いさせて下さい。私自身何度かmiloの演奏は聞かせてもらっていますが、あの素晴らしい演奏は無料で実施しているんでしょうか?また、今後の方向性を教えて下さい。

浦田:いえ。一応、演奏するときには、「1時間いくら」という形で料金を取っています。それでも、欧米の演奏家さん達よりは格段に安いのですが・・・(笑)。今後の方向性としては、演奏料を貯蓄して、最終的にはmiloの音楽学校を設立したいと考えています。

齊藤:今一人、プロデュースをされている女の子いましたよね?

浦田:アッタイちゃんですね。

齊藤:そうです!とても声が綺麗で、最初声を聞いた時から、すごいなぁ〜って思ってました。

浦田:(笑)。

齊藤:アッタイちゃんは、どうやって発掘したんですか?

浦田:シェムリアップの日本人会主催の第1回盆踊り大会で、「のど自慢大会」をやったんです。それで、歌が上手いカンボジア人、日本人大募集!みたいなことをやってて。私は審査員として参加した時に、彼女が出場してたんですよ。当時15歳で中学3年生だったのですが、すっごくオトナっぽい声で、面白いな〜と思ってスカウトしたんです。

齊藤:今、彼女はどのようなフェーズにいるのですか?

浦田:丁度、高校を卒業したところで、今はカンボジアの日本企業で働いてるんですよ。

高校卒業までは、miloとして歌っても出演料はあげてなかったんです。その代わりボイストレーニングとかは、無料で受けられるようにしていました。

でも、今は立派な社会人なので、miloとして1回歌いに来たらいくらあげるっていうシステムを取ってますね。

齊藤:以前お会いした時は、プロになりたい!と言っていましたが、今は違うんですか?

浦田:んーそうなんですよね・・・(笑)。なんていうか、彼女は待っているんですよ。「miloが何とかしてくれる」って。そう思ってるんですけど、私はそうしたくないんですよね。自分で考えられるんですよ。でも頼ってしまう。もし、miloをNGOにしてしまうと、彼女を守らなければいけないじゃないですか?だから、団体をNGOとかにしたくないんです。あくまで、彼女に考えさせたいんです。

だから、私は待ってるんです。
「私、本気でプロになりたい!」って言ってくるのを。でも、彼女も待ってる。だから何も動かないんですよね(笑)。

齊藤:そこまで自分で考えさせることにこだわる理由は何なんでしょうか?

浦田:プロデビューって本当に大変なんですよ。売れる曲を作れとか、嫌な仕事もやらなければいけないし、変なコト聞かれても答えなければいけないんです。それらを彼女自身で乗り切って欲しいんです。となると、しっかり自分で考えて動けるようにしなければいけないんですよ。

齊藤:なるほど

齊藤:働いていて辛かったことはなんですか?

西村:やっぱり安定的な収入が難しいという点ですかね。どうしても月毎で変動があるので、そこは辛いなって思うことはあります。

浦田:絵もそうだと思うんですけど、この公式を覚えれば出来るっていうもんじゃないですよね、この世界って。1年で開花する子もいれば、5年経って開花する子もいる。逆に何十年やっても開花しない子だっているわけです。色々と指導法はあるんですけど、それが全ての子に当てはまるわけではないですからね。

だから、親御さんからすれば、「いつうちの子は上手くなるんだ」って話になるし、子どもからすれば、「いつ自分は上手くなるんだ」って話になる。でも、それは私にも分からないんですよ笑。とにかく続けてもらうしか無いわけです。

私は、発表会を毎年開催するようにしてます。その時、親御さんには必ず言うんです。子どもを絶対に褒めてくださいって。それは、やっぱり褒めないと子ども達がやる気をなくすんです。







■芸術、音楽の分野から社会貢献を

齊藤:今後の事業はどのように考えていますか?

西村:あまり深くは考えてないですかね(笑)。

齊藤:でも、社会貢献的な要素を入れたいというのはありますか?

西村:やっぱり、絵を子どもに教えるのは面白いな〜って思いますね。私が子どもに教えるだけじゃなくて、子どもから教わることもあるので(笑)。そういう活動は、今も少ししていますが、今後もやっていきたいなと思いますね。

浦田:私は、カンボジアに7年間くらい暮らしてきて、音楽は国境を超えるということをすごく実感しているんですね。英語がしゃべれなくても楽しめるとかね。なので、そういう感覚をカンボジア人に伝えていきたいなと思います。

あとは、「生きる」という時に、勉強だけでないということを伝えたいなとは思いますね。私自身、小学校の時は学校では目立ってなかったですけど、音楽教室では目立ってたんですね(笑)。なので、カンボジアでも勉強ができなくても音楽だったらクラスナンバー1みたいな状況を作れたらいいなと思います。

齊藤:今後のカンボジア、もしくはシェムリアップはどうなると思いますか?

浦田:そうですね・・・。シェムリアップに関しては、観光の街から芸術の街になると思いますね。ここって、古都で日本でいう京都なんですよ。なので、観光という要素もありながらも、芸術が伸びるのではないかと思いますね。 

シェムリアップというよりは、カンボジア全体として、今、伝統的な文化が消えそうで消えないっていう絶妙なバランスのところにいると思うんですよ。だから、今後おじいさんやおばあさんだけが知っているその文化を、どれだけ後世に残せるかが大事なのだと感じます。

西村:私としては、シェムリアップって色々な国と文化があるので、それがどうミックスしていくかっていうのは気になりますね。

齊藤:確かに、この国ってすごくカオスだなって思いますよ(笑)。

西村:うんうん。それがどう秩序づくのかっていうのは興味がありますよね(笑)。

齊藤:最後に若者に一言お願いします!

西村:「こっちの水は甘いんだぞ」ですかね(笑)。たまに苦かったりするんですけどね(笑)。だから、こっちに来てみたら?って思います。


浦田:来るって決めたら、親御さんの理解が必要なんですよね。なんだかんだ。でも、それを理解してもらった上で、来ようと思えば来られるし、生活しようと思えば生活できるんだって思いますよ。日本人って良い意味で良いステータスを持っている。パスポート一つあれば、どこでも行けますからね。だから、その良さというか、プライドを生かしてほしいなって思いますね。

齊藤:本日は、どうもありがとうございました!!



ありがとうございました!!




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