Saturday, December 22, 2012

真のあるべきCSRとは何か?



真のあるべきCSRとは何か?





CSRに対する私の立場

CSRという言葉を、みなさんは聞いたことがあるだろうか。
この言葉は、今ではかなり一般的な言葉になってきているため、何の省略なのか分からなくても、なんとなくその意味は理解しているのではないだろうか。

CSRは、Cooperate Social Responsibilityの略語で、「企業の社会的責任」と日本語訳される。

CSRを論じる前に、そもそもの企業の活動について少しだけ述べたい。

企業は、社会からお金を得て、そのお金で生きている。
人々は、企業が提供するサービスにお金を支払い、そのサービスを享受しているのだ。したがって、企業が生き残るためには方法は一つしか無い。

そう。人々がお金を支払いと思うサービスを提供し、お金を得ることだ。

だから、CSRの必要性に懐疑的な論者は、よく企業活動の正当性を語る。つまり、企業の活動自体が既に社会貢献なのだから、わざわざ企業内で予算を組んで、社会貢献をする必要はないと言うのである。

私の立場を明確にしよう。
私は、企業の活動自体が社会貢献であるとする意見には、賛成する。ただし、したがってCSRは不要であるとはならない。CSRは、あって良い。しかし、それは本業に即した形であるべきで、自分自身、相手、そして社会の3方がwin-win-winの関係にならなければいけないと考える。

私が思うにCSRは、企業が現状行なっている事業を鳥瞰的に捉え、新たな可能性を模索する良いキッカケになると信じている。


CSRの歴史

CSRが登場する前、企業は自分たちの利益を最大化することだけを考えればよかった。もちろん、事業から社会に問題を産み出してしまっては、社会的な問題になる為、そういう点にはある程度気を使っていた。しかし企業の影響力はその企業だけ。それ以上を超えるということは無かったのだと思う。

そこに一石を投じたのが、メセナやCSRなのだと考える。これらの考え方は、実際企業のあり方を大きく変えた。メセナについてはあまり論じることはしないが、CSRのレベルまではいかないまでも、社会に自分たちの利益を還元することで、文化の擁護を促進しようとした。

近年、CSRをしていない企業は、社会的に悪なのでは?という考えが、社会、特に学生の間である気がしている。つい最近まで就職活動をしていて、企業のHPやパンフレットには必ずと言ってよい程、CSRの文字があった。

CSRへの関心が高まった背景としては、
1)企業の不祥事の頻発
2)企業活動の拡大とグローバル化
3)環境問題の深刻化
4)規制緩和の進展
5)市民の成熟
6)社会的責任投資の発展
という6つが列挙できる。

詳細は、『企業の社会的責任(CSR)—背景と取り組みー』(http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0476.pdf)を見てもらえればと思うが、私が特に大事だと思うのが、1)と2)だ。

日本におけるCSR元年は、2003年であると言われている。この年は、世界的な企業、エンロン社やワールドコム社が粉飾決済で破綻を余儀なくされた。また、日本においても三菱自動車のリコール隠し問題などが発覚、日本社会の中で、企業に対する不信感が漂っていった。

また、2)にあるような、企業活動が1国だけでなく多国籍に渡ることで、企業活動の影響がグローバルで出るようになった。特に途上国における企業活動の拡大は、児童労働問題や環境問題を浮き彫りにした。1997年頃に発生した、ナイキの不買運動などは、その一例である。

このような事が発生した結果、日本における企業は、2003年からCSR体制整備を始めた。具体的な企業名を挙げると、リコー、帝人、松下電器産業、ユニ・チャーム、キヤノンなどである。これが、2003年がCSR元年を呼ばれる所以である。


日経4紙に登場した、各言葉の増加数


 CSRを判断する5つの階層

さて、これまではCSRの歴史を述べてきたわけであるが、じゃあ会社自身が、自分たちの企業イメージを守るために、何でも良いからCSR活動を始めれば良いかといえば、難しい問題だ。

先述のように、CSRを意識している企業は数多くあるが、「真のあるべきCSR」を実践している企業はどれほどなのだろうか。

そこで、あるHPからCSRを判断するためのフレームワークを持ってきた。それが下記だ。



 各階層をそれぞれ説明してみよう。
1)法令に未対応
違法でない限り対応しない状態。CSRという概念を、そもそも持っていない状態。

2)法令を順守
規制による要請や強制、社会からの圧力によって受動的に対応している。こちらは「法令遵守」というCSRの最低限のこと受動的に行っている状態を指す。

3)法令を先取り
初期投資を上回る節減効果・ブランディングによる利益が得られ、変革に弾みがつく状態。具体的な活動としては、環境配慮商品・サービスの販売、CSR活動によるPR効果、信頼性の向上による取引先の増加など、金銭的なリターンも含めて、CSRが経営のプラスになると気付き始めた段階を指す。おそらく、殆どの企業は、ここで止まっている。

4)戦略への反映
CSRが企業戦略の策定・実行に当たっての中心テーマとなる。CSRを推進することで得られるメリットが明確になり、企業全体として体制づくりが急ピッチ進められていく段階である。キレイごとのCSRからビジネスとしてのCSRが本格始動する状態。継続的なコーズマーケティング(※)や、戦略的寄付、NPO/NGOとの連携など、どうしたら自社も儲けながら、ステークホルダーがハッピーになれるか、そんな動きが加速している。

5)目的や使命
CSRミッションそのものが企業の目的や使命の一部になる。自社の商品・サービスがCSR的であるかなんて関係ない。そんなの前提だから、というフェーズである。ここまで来ると、「戦略的CSR」という分類に入る。

(※)コーズマーケティング:企業の社会問題や環境問題などへの積極的な取り組みを対外的にアピールすることで顧客の興味を喚起し、利益の獲得を目指すマーケティング手法。


就職活動中感じたのは、3)の段階で止まっている企業が多いということだ。
CSRやっていて、地球に貢献しています!すごいでしょ?」
というメッセージが多くの企業から伝わってきた。

CSRは、必要な活動だ。それは否定しない。ただ、各企業の本業と沿った形で、且つ企業の戦略の一環として行われない限り、そのCSRは一過性のものに終わってしまう。大事なのは、「持続可能な社会」を創造するために、長期的な目線にたってCSRを実践しなければいけない。

■ファーストリテイリングから学ぶ、戦略的CSR

それでは、ここで、「目的や使命」のフェーズにいる企業の具体例を紹介したい。

ファーストリテイリング(ユニクロやジーユーを傘下に持つ)は、「全商品リサイクル」というものを実施している。これは、2001年に「フリースリサイクル活動」から始まったもので、2006年から回収対象をユニクロの全商品に拡大し、これまで期間限定だった活動を常時実施するようにしている、20118月までの活動実績は、1164.3万着の衣料を回収し、420.1万着の衣料を国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力して難民キャンプに送り届けている。
(詳しい活動は、こちら:http://www.uniqlo.com/jp/csr/
  



当活動は、難民キャンプへ衣料を届けて、衣料を必要としている人たちを支援するという形で社会へ貢献している一方で、本業への貢献をしている。実は、当活動を通じて衣料を配布する際に、支援国におけるマーケティングリサーチを実施しているというのである。つまり、当CSR活動は、社会への貢献だけでなく、自社の利益に(将来的であるが)直結している活動であると言える。


■今後の動向

CSR活動の今後の動向として、CSVという考え方が浸透してくるのではないかということだ。CSVは、Creating Shared Valueの略で、戦略的CSRとも言われる。先程のピラミッドでいえば、一番上がまさにCSVと言えるだろう(上記のファーストリテイリングの例もその一つ)。

CSVの基本的なコンセプト


CSRは、企業の発想力、競争力を表す指標にこれから成り得るのではないかと考えている。就職や転職、株式投資など会社を選ぼうとするときには、CSR活動を一つの判断材料にするのも、いいのではないだろうか。

真のあるべきCSRを実践している企業、私はそんな企業を応援していきたいと思う。



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